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中小企業にとってゼロトラストは本当に必要か?従来セキュリティの限界

クラウドやモバイルデバイス、リモートワークの普及により、組織内外のネットワークがあいまいとなったことや、高度化するサイバー攻撃の増加、高まるデータ保護への重要性などの要因で、従来のセキュリティでは対応できない状況となってきています。

こうした状況への有効な手段として、「ゼロトラスト」を導入する企業や組織が増えてきています。

ゼロトラストの概要から、その必要性、代替方法、導入などについて、主に中小企業向けにご紹介していきます。

◆ゼロトラストについて

ゼロトラスト(Zero Trust)は、「信頼しない、常に確認する」という原則を基にした従来のセキュリティモデルに代わる新しいアプローチです。

従来のセキュリティモデルでは、内部ネットワーク内のデバイスやユーザーは基本的に信頼され、外部からの攻撃に対する防御が重視されていました。

しかし、近年のサイバー攻撃の高度化や内部脅威の増加に伴い、従来のモデルでは十分に対応できない状況が増えてきているのです。

ゼロトラストモデルの代表的な特徴を紹介しましょう。

検証常態化

全てのアクセス要求を検証し、ユーザーやデバイスがネットワーク内であってもアクセスの度に認証を行います。

最小特権の原則

ユーザーやデバイスには、業務に必要最小限の権限しか与えません。

これにより、万が一侵害された場合の被害を最小限に抑えられます。

マイクロセグメンテーション

ネットワークを細かく分割し、セグメント間のアクセスを厳密に制御します。

これにより、1つのセグメントが侵害されても、他のセグメントへの影響を抑えることができます。

継続的な監視と分析

ネットワークのトラフィックやユーザーの行動を常に監視し、異常な活動を検知します。

これはリアルタイムで脅威を発見できるため、対策も講じやすくなります。

ポリシーの自動化

アクセス制御ポリシーを自動化し、動的に適用します。

ポリシーの一貫性を保ちつつ、迅速に変更や調整を行うことができます。

ゼロトラストモデルの採用は、企業や組織のセキュリティ強化に大いに役立ちますが、そのためには適切なツールや技術、従業員のセキュリティ意識を向上することが不可欠です。

◆中小企業はゼロトラスト導入が必要か?

まず結論として、中小企業にとってもゼロトラストの導入は重要であり必要です。

最たる理由として、中小企業は大企業に比べてリソースや予算が限られているため、セキュリティ対策が十分でないことが多いことから、ハッカー視点でサイバー攻撃の対象となりやすいためです。

しかしながら、ゼロトラスト導入が重要であることなどセキュリティに疎い方でも理解されていることと思います。

導入するにしても、目先の現実的な課題やデメリットが存在していることは事実です。

中小企業がゼロトラスト導入を検討する上で障壁となるポイントをいくつか挙げていきます。

初期導入コスト

まずは導入する際のコストです。

ゼロトラストの導入は初期費用が高額になることがあり、新しいセキュリティツールやソフトウェアの購入、既存システムの改修、専門知識を持つスタッフの雇用やトレーニングなどが必要となることから、中小企業にとって大きな障壁となっているケースは少なくありません。

複雑な実装

ゼロトラスト導入は複雑で、多くの要素を考慮しなければなりません。

ネットワークの全ての要素を可視化した上で細かくアクセス制御を行う必要があるため、高度な計画と技術が求められます。

運用の負荷

ゼロトラストモデルの運用は管理が大変です。

全てのアクセスを検証するため、認証や監視の負担が増加し、IT部門のリソースを大量に消費することが考えられます。

特に小規模なITチームでは、負荷が高くなることもあり得るでしょう。

既存システムとの互換性

既存のインフラストラクチャやアプリケーションなどとの互換性に問題が発生することがあります。

古いシステムやカスタムアプリケーションがゼロトラスト環境に適合しない場合、追加の修正やアップグレードが必要になるためです。

ユーザーへの影響

厳格な認証とアクセス制御のため、サービス内容によってはユーザーが不便を感じるケースが生まれる可能性が考えられます。

多要素認証(MFA)や頻繁なログイン要求が増えることで、ユーザーの生産性や満足度が低下することが懸念されます。

継続的なメンテナンス

ゼロトラストは一度導入すれば終わりではなく、継続的なメンテナンスとアップデートが必要です。

新しい脅威に対応するため、ポリシーを更新してシステム全体を常に監視し続けなければ効果が薄れます。

組織内の理解

組織全体でのゼロトラストの理解と支持が得られない場合、導入がスムーズに進まないことがあります。

特にネットワークの境界を強固に防御する従来のセキュリティモデルに慣れている従業員や経営陣は、新しいセキュリティモデルに対して抵抗を示すこともあるでしょう。

ゼロトラストは高度なセキュリティを提供する一方で、ご紹介したような多くの課題が伴います。

自社のニーズとリソースに合った計画を立てることが重要となるため、適切な専門家の支援を受けることも考える必要があるかもしれません。

◆ゼロトラストの代替方法は?

ゼロトラスト導入が難しいという場合の代替案を、いくつか考えてみようと思います。

境界型セキュリティ

ネットワークの境界にセキュリティ対策を集中させるアプローチです。

主にファイアウォール、侵入検知システム(IDS)、侵入防止システム(IPS)などを利用して、外部からの不正アクセスや攻撃を防ぎます。

境界型セキュリティは実装が比較的簡単で、既存のインフラストラクチャに適用しやすいことと、境界防御用の製品やサービスが豊富に提供されていることがメリットです。

多層防御

単一の防御手段に依存するのではなく、複数の防御層を設けることでセキュリティを強化するアプローチで、ディフェンス・イン・デプス(Defense in Depth)とも呼ばれています。

セキュリティを多層化することで、単一の防御対策の限界を補完し、全体的なセキュリティの強化となります。

サーバールームの施錠や監視カメラ、アクセス制御システムからネットワークセキュリティ、アンチウイルスソフトウェア、エンドポイント検出対応ツール(EDR)、ユーザー・アクセス制御など組み合わせて広範な脅威に対応します。

これにより攻撃者が一つの防御層を突破したとしても、全体のセキュリティが崩れるリスクを低減することにつながります。

セグメンテーション

ネットワークを複数のセグメント(区画)に分割し、それぞれのセグメントに異なるセキュリティポリシーを適用するアプローチです。

これにより、特定のセグメントでセキュリティ侵害が発生しても、他のセグメントへの影響を最小限に抑える効果があります。

イベント管理(SIEM)

SIEMは、セキュリティインシデントの検出、分析、対応を支援するためのセキュリティです。

ネットワークやシステムから収集されたログやイベントデータを収集、統合し、セキュリティイベントを監視・分析し、セキュリティインシデントへの対応を効率化します。

ゼロトラストモデルの代替方法をいくつか紹介しましたが、いずれも重要なセキュリティであることは間違いありません。

中小企業の場合は限られたリソースを考慮して、複数の方法を組み合わせてセキュリティを強化することが効果的となります。

しかしながら、目まぐるしく変化する昨今のセキュリティ事情において、従来の対策方法では対応しきれないケースも多く出てきています。

次は、従来のセキュリティでは対応することが困難なケースを順にご紹介していきます。

◆従来セキュリティの限界

先にご紹介した対策方法では対処できないケースが多くあります。

では、どう対処できないのか?ゼロトラストモデルであればどのような効果が表れるのか?

順にご紹介していきます。

内部脅威の防止

境界型セキュリティは、内部ネットワーク内の脅威に対して脆弱です。

内部の悪意あるユーザーや侵入者が一度ネットワーク内にアクセスすると、自由に活動されてしまうことが懸念されます。

また、ネットワーク境界が明確であることを前提としているため、クラウドサービスやリモートワークの普及に対応しにくい点も課題になります。

ゼロトラストの強みとして、すべてのユーザーとデバイスが常に検証されます。

これにより最小特権アクセスが適用されるため、内部の脅威にも対処が可能となり、クラウドサービスやリモートワーク環境でも適用できることから、ネットワーク境界が曖昧な状況でも効果を発揮します。

動的なセキュリティポリシーの適用

静的なセキュリティポリシーを使用する代替方法では、リアルタイムの状況変化に対応するのが難しく、動的なリスク対応が困難です。

ゼロトラストでは、リアルタイムでのリスク評価に基づいて動的にセキュリティポリシーが適用されるため、コンテキストに応じた適切なセキュリティ対策となります。

ユーザーとデバイスの詳細な可視性と制御

ディフェンス・イン・デプスやセグメンテーションでは、ネットワーク内のすべてのユーザーとデバイスの動きをリアルタイムで監視し、細かく制御するのが難しい場合があります。

ゼロトラストの場合、すべてのユーザーとデバイスの活動を詳細に追跡し、アクセス制御を細かく設定することができます。

これにより、不正な行動を迅速に検出して対処できます。

ゼロトラストは、内部脅威の防止、動的なセキュリティポリシーの適用、ユーザーとデバイスの詳細な可視性と制御、ネットワーク境界の消失への対応、複雑なアクセス環境の管理など、他の代替方法では対処しにくいセキュリティ課題に効果的であることからも多くの企業組織では導入、もしくは検討が進められています。

◆ゼロトラスト導入の検討と専門家の選定

ゼロトラストの導入は一度に全てを行うのではなく、段階的に進めることが一般的です。

ネットワーク内の資産やデータの可視化を行い、重要なデータやシステムから優先的にゼロトラストポリシーを適用していくわけですが、なかなか自社のみで対応するには難しくハードルが高いことも前述したとおりです。

そこで推奨されるのは「専門家に相談する」という方法です。

専門家の選定

まず、専門家の選定を行うことになりますが、「具体的なセキュリティ目標を明確にする」ことと「予算とリソースを確保する」という2点をあらかじめ検討しておくのは非常に重要です。

ゼロトラストの専門知識を持つ企業やコンサルタントを調査する上で、この2点があいまいであれば、自社にとって満足のいくセキュリティ環境を構築できないおそれがあるからです。

専門家の選定は、評判、実績、専門知識を基に候補を絞り込み面談を繰り返し、その後提案内容やコスト面を評価して決定します。

導入計画

選定の次は導入計画を練ります。

現在のセキュリティ状況の評価、課題、改善点、セキュリティリスクを評価し、優先順位を設定します。

導入プロセスのステップ、人員、時間、予算などの各リソースの割り当てなど検討して順次計画を具体的にしていきます。

インフラとツールの準備

導入計画が完成すれば、インフラストラクチャの整備とツールの導入と設定を進めます。

ネットワークの可視化やアクセス制御の設計、セキュリティツールの選定と導入、セキュリティポリシーの設定などを順次行っていきます。

実装とテスト

実装においては、リスクの少ない部分から段階的に進めます。

既存のインフラストラクチャやアプリケーションと新しいセキュリティシステムを統合し、問題点の特定などテストと改善を繰り返し進めます。

継続的な運用

無事ゼロトラストの導入が終われば、その後は環境の維持を行います。

新しいセキュリティポリシーやツールの使い方、セキュリティ意識向上などの従業員への教育をはじめ、ネットワーク全体のトラフィックやアクティビティを監視して異常な行動を検出します。

セキュリティポリシーやシステムの効果を定期的にチェックし、ユーザーや管理者からのフィードバックを収集してシステムの改善を繰り返すことで、ゼロトラストの効果が大いに発揮されます。

◆まとめ

ゼロトラストの効果と重要性は理解しているものの、中小企業においては導入への課題が多いこともまた明らかです。

自社にとってどのようなセキュリティ環境が望ましいのかを明確にした上で、ゼロトラスト導入の必要性を考慮すべきですが、その判断も自社だけでは難しいというケースも考えられます。

そうした状況にはやはり専門知識を持った企業やコンサルタントに相談して検討してもらうのは非常に有効な手段です。

弊社でも、ゼロトラスト思考の情報セキュリティ対策として、サイバーセキュリティの視点からソリューション提供を行っていますので、お気軽にご相談ください。