個人情報保護力量検定は検討するべきか?求められる従業員のスキルと企業組織のバックアップ体制
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個人情報保護力量検定は検討するべきか?求められる従業員のスキルと企業組織のバックアップ体制
昨今の個人情報保護に対する意識の高まりと、企業組織に求められる安全性は加速的に上がり続けています。
こうした状況において、個人情報保護法や関連法令、個人情報の適切な取り扱い、個人情報保護マネジメントシステムへの理解がある人材は企業組織にとって非常に重要と言えます。
同コラムでは、従業員の個人情報やプライバシー保護に関する知識とスキルの有無を見極める上での一つのガイドラインともいえる「個人情報保護力量検定」について、概要から検定内容、企業組織に求められる社内教育のポイントなどの観点で順次ご紹介していきます。
◆個人情報保護力量検定とは
個人情報保護力量検定(Personal Information Protection Competency Examination)は、日本の個人情報・プライバシー保護に関する知識とスキルを評価するための試験で、一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)と一般社団法人日本DPO協会(JDPOA)が共同で創設しました。
検定の目的は、個人情報保護に関する法律や規制、個人情報の適切な取り扱いに関する知識、個人情報保護マネジメントシステム(PMS)の構築や運用に関するスキルなどを持つ人材を育成することです。
これにより、個人情報の漏洩や不正利用などのリスクを最小限に抑えるための人材を増やし、企業や組織の情報セキュリティを向上させることを目指しています。
検定はスタンダードとエキスパートの2つのレベルに分かれており、スタンダードでは個人情報保護の基礎知識や法令遵守、個人情報保護マネジメントシステムの基本的な理解などが評価されます。
一方のエキスパートでは、より高度な知識やスキルが必要とされ、個人情報保護管理者や監査責任者としての能力が評価されます。
試験は毎日受験可能であり、全国各地にあるCBT(Computer Based Test)テストセンターで受験することが可能です。
試験に合格することで、個人情報保護に関する専門知識やスキルの証明につながります。
◆個人情報保護力量検定の出題範囲は
検定で出題される範囲は決まっており、概要としては以下の内容となっています。
・プライバーシーの基礎
個人情報保護の基本概念やプライバシーの重要性、歴史的背景などに関する知識が含まれます。
・個人情報保護法(民間部門)及び番号法の基礎
日本の個人情報保護法や関連法令、番号法に関する基本的な知識が含まれます。また、「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」に関するQ&Aも含まれます。
・個人情報保護法コンプライアンス対応
個人情報保護法に適合するためのコンプライアンスや適切な対応策に関する知識が含まれます。
・プライバシーマーク制度と個人情報保護マネジメントシステム
プライバシーマーク制度に関する知識や、個人情報保護マネジメントシステムの構築・運用に関する理解が含まれます。
・プライバシーマーク付与適格性審査指針
プライバシーマークの付与基準や適格性審査に関する知識が含まれます。
・プライバシーマーク制度における個人情報保護管理者(CPO)と個人情報保護監査責任者の役割(エキスパートのみ)
個人情報保護管理者や監査責任者としての役割や責任に関する知識が含まれます。
このように、試験範囲は個人情報保護に関する法令や規制、プライバシーマーク制度、個人情報保護マネジメントシステムなど幅広い領域をカバーしていることから、必要となる知識も多彩です。
個人情報の取り扱いに関する法律や規制、個人情報保護法や個人情報の保護に関する法令の理解にはじまり、プライバシーマネジメントシステム(PMS)、プライバシーマーク制度についての知識、個人情報の定義や重要性、個人情報のセキュリティ管理や情報漏洩対策、セキュリティポリシーの作成に関する知識、個人情報保護マネジメントシステムの運用、プライバシー監査に至る知識が求められます。
いずれの知識も個人情報の適切な取り扱いやプライバシー保護を確保するために重要な要素となり、個人情報保護力量検定ではこれらの知識を実務的な視点から理解し、実践的に適用できる能力が評価されるようです。
◆個人情報保護力量検定を受験するメリットとデメリット
個人情報保護力量検定を検定するにあたり、メリットとデメリットの観点をそれぞれ挙げてみましょう。
▽メリット
専門知識の獲得
個人情報保護力量検定を受験することで、従業員が個人情報保護に関する専門知識やスキルを獲得し、個人情報の適切な取り扱いや法令遵守が促進されます。
信頼性の向上
個人情報保護力量検定に合格した従業員は、組織内での信頼性や信憑性が高まります。顧客や取引先からの信頼を獲得し、企業の信用向上につながる可能性があります。
法令遵守の強化
個人情報保護力量検定を受験することで、企業が個人情報保護法や関連法令に適合するためのコンプライアンス体制を強化できます。
競争力の向上
個人情報保護に対する意識が高まることで、企業のサービスや製品の競争力が向上する可能性があります。顧客が個人情報の適切な取り扱いを重視する傾向があるため、個人情報保護力量検定を受験した企業は競争上の優位性を持つことができます。
▽デメリット
受験費用と時間の負担
個人情報保護力量検定の受験には一定の費用がかかり、従業員が受験に費やす時間も考慮する必要があるため、企業にとっては負担となる場合が考えられます。
合格率の不確実性
個人情報保護力量検定は一定の難易度があり、合格率には不確実性があるため、従業員が複数回の受験を経て合格するまでに時間がかかる可能性があります。
単なる資格取得のみでは不十分
個人情報保護力量検定を受験しただけでは、実際の業務や体制の改善には直接的な効果が得られない場合があります。
従業員が受験後に学んだ知識やスキルを実務に活かすためには、組織全体での意識改革や体制整備が必要となるでしょう。
個人情報保護力量検定は個人情報に関わる業務を担当する従業員や、個人情報保護マネジメントシステムの運用や監査を行う担当者にとって特に重要な資格となります。
逆に言ってしまえば、個人情報に関わらない業務を担当する従業員にとっては、直接的に受ける必要性は薄いことになりそうです。
しかしながら、個人情報保護に関する基本的な知識や意識は、組織全体で共有されるべきもので、特に最近では個人情報の重要性の高まりからも企業が個人情報保護に対する取り組みを強化する動きが広がっています。
個人情報保護に関係ない業務を担当する従業員であっても、基本的な個人情報保護の理解や意識を持つことが重要と言えるので、ご紹介した個人情報保護力量検定を受ける上でのメリットとデメリットも踏まえて受験を検討するのが望ましいということになりそうです。
◆個人情報保護力量検定を検討する上での対策
個人情報保護力量検定の受験を企業組織で検討する上で、考慮すべきポイントを挙げておきます。
まずは受験するにあたり発生する、受験費用と時間の負担軽減です。
受験費用や時間の負担を軽減するために、従業員に対して受験費用の補助や、受験に集中できるように業務時間を調整するなどの支援が考えられます。
また、受験準備を効率的に行うための学習支援プログラムや教育資料の提供も検討してみてもいいかもしれません。
次は、合格率を向上させるための準備と対策は当然ながら重要です。
従業員に対して模擬試験や過去問題の解答、受験対策セミナーの提供など、合格率を高めるための支援を行うことが有効となります。
また、個人情報保護力量検定に関する教科書も2点発売されており、一つ目はJDPOAが発行している個人情報保護力量検定に特化した「個人情報保護力量検定教科書」です。
内容としては、基本的な個人情報保護の知識から上級者向けの内容まで幅広く網羅されており、個人情報保護法やプライバシーマーク制度などに関する基礎知識、実務で必要なスキルまでを学ぶことができます。
二つ目は、日本規格協会から出版されているガイドブック「個人情報保護マネジメントシステム導入・実践ガイドブック(JIS Q 15001:2023)」で、内容は個人情報保護マネジメントシステム(PMS)の導入や運用に関する指針が記載されています。
PMSを活用して個人情報の適切な管理や保護を行うための実践的な知識を得ることができるものになっています。
以下参照ページリンク
【https://www.jipdec.or.jp/news/pressrelease/20240313.html】
まとめ
個人情報保護力量検定の取得はゴールではありません。
受験した従業員が学んだ知識やスキルを実務に活かし、企業組織の業務遂行にあたり必要となる個人情報保護に関わる様々なリスクを最小限に抑えることが最も大切です。
受験した従業員のスキルをより効果的にするためには、企業組織での支援環境も重要です。
組織内での意識改革や個人情報保護マネジメントシステムの適切な運用を促進し、従業員が学んだ内容を実践的に活用するために継続的な教育や研修など考慮する必要があります。
最新の法令や規制の変更に対応した情報提供や、実務での課題に対する解決策を提供することで、従業員のスキル向上や業務効率の改善につながることを見据えて個人情報保護力量検定を検討していただきたい。