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「アイドルのため」病院から総額約1億7千万円着服 データ改ざんなどで懲役7年の実刑判決

三重県の町立南伊勢病院の元職員による業務上横領事件について、裁判所は被告に対し懲役7年の実刑判決を言い渡した。
この事件で業務上横領の罪に問われていたのは、元町職員の「廣出翔(ひろいで しょう)被告(41)」。
判決などによると、廣出被告は2016年6月から2022年6月までの約6年間、南伊勢町の上下水道課および町立南伊勢病院で会計業務を担当していた立場を利用し、水道事業および病院の口座などから現金を繰り返し引き出し、計697回にわたって総額約1億7千万円を着服した。
判決文などで認定された内容は以下の通り。

▼着服の具体的内容:
2016年(平成28年)6月から2022年(令和4年)6月までの約6年間にわたり町が管理する水道事業と病院の口座から、現金を697回にわたって引き出し合計で約1億7千万円を着服

▼会計データの改ざん:
被害が発覚しないよう、帳簿や伝票の記載を改ざんしていたことも指摘されている

▼着服した金の使途:
裁判での検察側の主張によれば、廣出被告は遊興費(レジャーや趣味などの私的な出費)や生活費に充てる目的で現金を不正取得していたとされており、具体的には「アイドルの応援」などへの出費があったという。

津地方裁判所の出口博章裁判官は判決理由の中で、「被告は遊興費や生活費を手っ取り早く得るために常習的な横領を繰り返しており、その動機は身勝手で安易かつ浅はか」と指摘。
被害の大部分は弁償されておらず、厳しい非難が向けられるべき行為」と述べた。
これまでの公判では、検察側が懲役8年を求刑した。
弁護側は、被告が1153万円の被害弁償を行っていることや、懲戒免職処分を受けた社会的制裁などを踏まえた寛大な判決を求めていた。
一部の着服については弁護側が争っていたが、津地方裁判所は証人の証言や証拠とされた伝票に基づき「横領したと認めるほかない」として弁護側の主張を退けた。
また、この事件に関連して、廣出被告の元上司であった町職員4人に対し、南伊勢町は管理責任があったとして、損害額の3割に相当する賠償を命じた。
うち3名はすでに支払いを済ませているが、最高額となる2926万円の賠償を命じられた1名は命令の取り消しを求めて町を提訴している。
町は監査委員の審査結果を受け、この1名に対する賠償額を1割相当の約1千万円に減額し、2025年4月11日付で改めて支払いを命じている。

南伊勢町町長は、今回の判決を受けて「町民の皆さまには大変ご心配をおかけしました。再発防止に努め、信頼を回復するため一層の努力と改善を重ねてまいります」とコメントしている。

【参考記事】
https://www.asahi.com/articles/AST582WB5T58ONFB00BM.html
https://www.tokyo-np.co.jp/article/403557