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従業員のセキュリティ教育・研修は自社だけで充分なのか?

ここ最近の情報流出やサイバー攻撃に関するニュース頻度は増加する一方です。

その原因として多く見受けられるのは、システムの設定ミスや確認不足といったヒューマンエラーによるものです。

また、事前に知識として知っているだけで防ぐことができた事案や、従業員による機密の不正持ち出しなども目にする機会が増えているように感じます。

情報セキュリティを取り巻く環境が複雑化し続ける昨今において、所属している従業員や関係者個々にも求められるセキュリティ意識の向上が大きな課題として注目されている状況です。

こちらのコラムでは、企業における情報セキュリティの必要性から、セキュリティを重視しない場合のリスクなどを逆説的に取り扱い、セキュリティに直結する従業員のセキュリティ教育に関する内容を順次述べていきます。

企業組織における情報セキュリティの必要性

そもそも「企業組織における情報セキュリティは本当に必要なものなのか?」という点を考えていきたいと思います。

結論から述べると「企業組織における情報セキュリティの必要性は非常に高い」です。

その理由として考えられるポイントは以下の通りです。

機密情報の保護

まず企業は顧客情報、取引情報、財務情報など機密性の高いデータを保持しています。

これらの情報が流出すると、企業の信頼性や競争力に大きな影響を与える可能性があります。

法的要件の遵守

多くの国や地域で、企業は顧客データや個人情報を適切に保護する義務を負っています。

情報流出やセキュリティ侵害が発生した場合、法的な罰則や制裁を受ける可能性があります。

サービスの継続性

サイバー攻撃やデータ流出などのセキュリティインシデントが発生すると、企業のサービス提供能力に影響を与える可能性があります。

情報セキュリティ対策を強化することで、サービスの継続性を確保し、顧客や取引先との信頼関係を維持します。

競争力の維持

情報セキュリティが十分に確保されている企業は、顧客や取引先から信頼されやすくなります。

セキュリティ対策が弱い企業はリスクが高いと見なされ、競争力が低下する可能性があります。

これらの例はあくまでも一部です。

今や企業組織における情報セキュリティについて適切な対策を講じることは、自社だけの問題に止まらず、顧客はもちろんのこと従業員やその家族、関係者、取引先など非常に広範囲に影響する問題と言えます。

業界ごとの情報セキュリティ

情報セキュリティの重要性について、考える上で業界ごとの差があるのか?

という疑問から少し調べてみました。

情報セキュリティが重視される業界を、いくつか例を挙げていきましょう。

金融業界

金融業界は顧客の個人情報や取引データなど非常に機密性の高い情報を取り扱っています。

クレジットカード情報や銀行口座情報などが流出すると、顧客や企業に大きな被害をもたらす可能性があります。

また、金融機関は法的規制にも厳しく、情報セキュリティ対策が重要視されています。

医療業界

医療業界は患者の個人情報や医療記録などを取り扱います。

これらの情報は非常にプライバシーが重要であり、流出や不正アクセスがあると個人や組織に深刻な影響を及ぼす可能性があります。

医療機関は個人情報保護法や健康保険法などの法的規制にも適合する必要があります。

政府機関

政府機関は国家の重要な情報や国民の個人情報を保有しています。

これらの情報が流出したり、サイバー攻撃の標的とされると国家安全保障に深刻な影響を与える可能性があります。

政府機関は国家情報保護法やセキュリティ基準に基づいて情報セキュリティ対策を実施しています。

エネルギー業界

エネルギー業界はインフラや制御システムを運用しており、これらのシステムが攻撃されると大規模な停電やインフラ機能の破壊が起こり得ます。

そのため、エネルギー業界ではサイバーセキュリティ対策が重視されています。

製造業

製造業では知的財産や技術情報、製品設計などが重要な情報資産となります。

競合他社からの情報流出やサプライチェーン攻撃などがリスクとして考えられ、セキュリティ対策が重要視されています。

小売業

小売業では顧客情報や取引データ、支払い情報などが取り扱われます。

オンラインショッピングの増加に伴い、クレジットカード情報の保護や顧客プライバシーの確保が重要視されています。

上記の業界において、情報セキュリティの重要性に関する共通点がいくつか見受けられます。

まずは金融業界、医療業界、政府機関などは顧客や患者の個人情報や取引データなど、機密性の高い情報を取り扱っていることです。

これら情報の流出や、不正アクセスは深刻な被害を招く恐れが考えられます。

また、業界は法的規制に厳しく適合する必要が求められており、個人情報保護法や国家情報保護法などの法律や規制に準拠することが必要と言えるでしょう。

いずれの業界においても、機密性の高い情報の保護や法的規制への適合、サイバーセキュリティ対策の重要性、顧客プライバシーの保護などが共通して重視されていることになります。

では一方で、「情報セキュリティが特に重視されない業界」はあるのでしょうか?

結論としては、程度の差はあるものの「情報セキュリティが特に重視されない業界はない」と言い切ってもいいでしょう。

厳密には情報セキュリティが他と比べて特に低いとされる業界はあります。

例としては、小規模な小売業や地域の個人店舗などです。

情報セキュリティについての意識が低い場合があり、情報セキュリティへの投資や対策の実施が限られていることが影響しています。

また、一部の教育機関や非営利団体、社会福祉団体などでは情報セキュリティについての意識が低い場合があります。

学校や大学などでは教育や研究活動が中心であることや、資金やリソースが限られているといった理由からセキュリティ対策に割ける予算や時間が限られていることが影響しているケースがあります。

しかしながら、これらの業界においても近年は情報セキュリティの重要性が高まっており、セキュリティに対する意識や対策が徐々に向上している傾向があります。

また、一部の企業や団体では規模やリスクに応じてセキュリティ対策を実施している場合も増えてきている状況にあります。

情報セキュリティを重視しない際のデメリット

企業組織において、情報セキュリティに注力しない場合のデメリットやリスクの視点も基礎的な知識として知っておいてもいいかもしれません。

考えられる例は以下の通りです。

情報流出リスク

情報セキュリティを軽視すると、機密情報や個人情報が流出するリスクが高まります。

顧客データや取引情報などが外部に流出すると、企業の信頼性や評判に大きな損害を与える可能性があります。

法的制裁の可能性

多くの国や地域で、企業は顧客データや個人情報を適切に保護する義務を負っています。

情報流出やセキュリティ侵害が発生した場合、法的な罰則や制裁を受ける可能性があります。

これには罰金や訴訟、信用失墜などが含まれます。

競争力の低下

セキュリティが脆弱な企業は、顧客や取引先から信頼されにくくなります。

競合他社と比較してセキュリティ対策が不十分であると見られると、顧客の取引先として選ばれにくくなる可能性があります。

企業価値の低下

情報セキュリティの脆弱性は、企業の価値を低下させる要因となります。

投資家や株主、取引先などがセキュリティに対する信頼を失うと、企業の評価や市場価値が下がる可能性があります。

サービス停止や障害

サイバー攻撃やセキュリティインシデントが発生すると、企業のサービス提供能力に影響を与える可能性があります。

顧客に対するサービス停止や障害は信頼性を損ない、競争力を低下させる要因となります。

これらのデメリットからもわかるように、情報セキュリティを軽視することは企業にとって大きなリスクを伴う行動と言えるわけですが、一方で「情報セキュリティに力を入れない場合のメリットは存在するか?」という疑問を持たれている方も多少はいるかもしれません。

大きく以下3つのポイントが挙げられます。

コスト削減

セキュリティ対策は費用がかかるため、セキュリティを軽視することでコストを削減することができます。

特に小規模な企業や予算の制約がある場合には、セキュリティ対策の優先順位を下げることが選択肢となる場合があります。

業務効率の向上

セキュリティ対策が厳格すぎると、業務プロセスに制約が生じることがあります。

セキュリティを犠牲にすることで、業務効率を向上させることができる可能性があります。

スピードと柔軟性

セキュリティ対策が厳しすぎると、新しい技術やシステムの導入が遅れることがあります。

セキュリティを緩めることで、スピードと柔軟性を高めることができる場合があります。

しかし、残念ながら以上3点のメリットは一時的で、限定的なものであることは否めません。

長期的な視点で見ると、情報セキュリティを軽視することは結果的に多くのリスクを伴う可能性があります。

情報流出やセキュリティ侵害、法的制裁、信頼性の低下などはその代表例です。

求められるセキュリティ教育・研修

これまでセキュリティの重要性に関する内容を掘り下げてきました。

では、企業組織において情報セキュリティを高めるためには、具体的にどのようなことに気を付けるべきでしょうか?

基本的なポイントとしては以下のような方法が効果的です。

セキュリティポリシーの策定と遵守

企業は情報セキュリティに関するポリシーを策定し、従業員や関係者に遵守を求める必要があります。

ポリシーは情報の取り扱い方法、アクセス権限の管理、セキュリティ対策の実施方法などを明確に定めるものです。

セキュリティ意識の向上

従業員や関係者に対して定期的なセキュリティ教育・研修を行うことが重要です。

社内での情報セキュリティに関する意識を高めることで、セキュリティ対策の効果を向上させることができます。

アクセス管理の強化

システムやデータへのアクセス権限を適切に管理することが重要です。

必要最小限の権限を付与し、不要なアクセスを制限することでセキュリティを高めることができます。

パッチ管理

システムやソフトウェアのセキュリティパッチを定期的に適用することが重要です。

パッチはセキュリティの脆弱性を修正するために提供されるものであり、定期的な適用がセキュリティ対策の基本です。

ネットワークセキュリティの強化

ファイアウォールや侵入検知システムなどのネットワークセキュリティ対策を強化することで、外部からの攻撃や不正アクセスを防ぐことができます。

データの暗号化

機密性の高いデータは暗号化することで、情報流出のリスクを軽減することができます。

特に外部からの不正アクセスに備えて、データの暗号化を実施することが重要です。

セキュリティ監視と対応体制の整備

セキュリティインシデントの監視を行い、異常を検知した場合には迅速かつ適切に対応する体制を整備することが重要です。

セキュリティ対応チームや対応手順の整備を行うことで、セキュリティインシデントの被害を最小限に抑えることができます。

これらの方法を総合的に取り組むことで、企業組織の情報セキュリティを高めることができます。

この中でも特に重要と言えるのは「従業員や関係者に対して定期的なセキュリティ教育・研修」の点です。

どのようなセキュリティ教育・研修が必要か?

どんなにレベルの高いセキュリティ機器やシステム、ソフトウェアを導入しても、それらを使用・管理するのは人間です。

つまり、どんなに素晴らしいセキュリティツールも、使用する者のセキュリティへの意識がおろそかでは、せっかくのセキュリティ環境も効果を発揮できないということです。

セキュリティ教育・研修を実施することで、従業員や関係者の情報セキュリティに関する基本的な知識の習得や、適切な行動を取る上で非常に重要です。

以下は推奨されるセキュリティ教育・研修として挙げられる一例です。

基本的なセキュリティ概念の理解

パスワード管理、データの取り扱い、不審なリンクや添付ファイルの取り扱いなど、基本的なセキュリティ概念を理解させることが重要です。

セキュリティポリシーの説明

企業のセキュリティポリシーについて説明し、従業員や関係者が遵守すべきルールや手順を明確にすることが重要です。

フィッシング対策

フィッシング攻撃やスピアフィッシング攻撃などから身を守るための方法を教えることが重要です。

不審なメールやリンクを開かない、不審な添付ファイルをダウンロードしないなどの対策が含まれます。

ソーシャルエンジニアリングの理解

ソーシャルエンジニアリング攻撃に対する警戒心を高めるための教育を行います。

不審な電話や情報収集の手法に注意するよう促します。

データの適切な取り扱い

機密情報や個人情報などのデータを適切に取り扱う方法を教えます。

データの暗号化や適切な保存方法などが含まれます。

セキュリティインシデントへの対応

セキュリティインシデントが発生した場合の対応手順や報告方法について教育します。

迅速かつ適切な対応が重要です。

最新の脅威情報の提供

セキュリティに関する最新の脅威情報や攻撃手法について定期的に情報提供を行います。

従業員や関係者が最新の脅威に対応できるようにするためです。

これらはセキュリティ教育・研修を実施する上では基本的内容になりますが、間違いなく従業員や関係者が情報セキュリティに対する意識を高め、適切な行動を取ることにつながるでしょう。

自社のみでセキュリティ教育・研修は可能か?

自社のみでセキュリティ教育・研修を行うことは可能ですが、効果的な教育・研修を行うためにはいくつかのポイントに注意する必要があります。

専門知識の習得

セキュリティ教育・研修を行う担当者がセキュリティに関する専門知識を持っていることが重要です。

セキュリティに関する最新のトレンドや脅威について理解し、適切な情報提供を行う必要があります。

カスタマイズされたプログラムの作成

自社の業種や状況に合わせてカスタマイズされたセキュリティ教育・研修プログラムを作成することが重要です。

一般的な情報セキュリティの基本知識だけでなく、自社のセキュリティポリシーや対策手順についても理解させる必要があります。

定期的な実施

セキュリティ教育・研修は一度だけではなく、定期的に実施することが重要です。

新入社員や変更があった場合には追加の教育・研修を行い、従業員のセキュリティ意識を維持する必要があります。

教育の効果測定

実施したセキュリティ教育・研修の効果を定量的または定性的に測定し、改善点を把握することが重要です。

従業員の理解度や行動変化を評価し、必要に応じてプログラムを修正・改善することができます。

以上のように、自社でのセキュリティ教育・研修を効果的なものにするには、専門知識の確保やカスタマイズされたプログラムの作成、定期的な実施と評価を行うことが求められます。

しかし、実際にこれらの内容を網羅して実施できる企業組織となると、人材面でも金銭面でも余裕のある企業組織であることが条件になってくるため、多くの企業組織では難しいでしょう。

まとめ

業界問わず企業組織において、セキュリティを重視することにフォーカスしてご紹介してきたわけですが、セキュリティ環境を強化する上で重要となる教育や研修面での難しさという側面も明らかになっています。

ここで検討いただきたいのは、「外部専門家の活用」です。

必要に応じてセキュリティ専門家やコンサルタントを外部から招いて教育・研修を行うことも考えられます。

外部の専門家は最新の情報やベストプラクティスを提供していることから、より効果的な教育・研修を実施する支援として非常に有効な手段です。

弊社においても、セキュリティ教育における様々な研修プログラムを行っているので、ぜひ参考にしていただきたいと思います。